私はoasisファン歴25年以上の大ファンで、あの奇跡の再結成ライブ「Oasis Live ’25」にも奇跡的に参加できた一人だ。しかも運よくVIP席で、あの空気を肌で感じている。
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は、そんな伝説のツアーの舞台裏と、20年ぶりに揃ったリアムとノエルの合同インタビューを収めたライブ・ドキュメンタリーである。この記事では、現場で体感した”あの日”の記憶と、映画が切り取った”許し”というテーマがどう重なり、どうズレていたのかを軸に批評していきたい。
『Oasis : Don’t Look Back in Anger』の総評
80 / 100
「15年分の沈黙への、ギャラガー兄弟からの返事」。
- 物語・テーマ性 4点
- 演出・映像表現 4点
- 人間ドラマとしての深み 3点
- 音楽・世界観演出 4点
- oasisやファンへの敬意 5点
合計 20 / 25 → 換算 80点
- 単なるバンド復活のドキュメンタリーではなく「許し」を題材にした映画だった。15年ほど絶縁状態だったリアムとノエルが互いを許し合い、二人自身、かつてのメンバー、そしてファンがoasisという場所に戻ってこられた物語になっている。人生は思い通りにいかないこともあるが、それでも人は歩き続けられる、その支えに音楽の力があると感じられた
- リアムとノエルが揃ったリハーサル初日の緊張感。ファンとしてずっと見たかった瞬間で、メンバーのボーンヘッドが良いムードメーカーになっていた
- ファンのインタビューに共感しまくった。特に「他のバンドは倒れた時に立ち上がるのを応援してくれるが、oasisは一緒に倒れて、一緒に立ち上がってくれる」というコメントに強く共感した。ライブが終わった瞬間に泣き崩れるファンの姿にも共感でき、oasisは”人気バンド”ではなく青春や人生そのものだと感じた
- ライブの音源をフルで聴けることはあまりないが、聴くだけで去年のライブを思い出せる
- リアムとノエルが楽しそうにインタビューを受けているラストシーン。二人が今までで一番仲良く、幸せそうに見えた
- ファンインタビューが多い。コメント自体には共感できることばかりだが、その分リアムやノエル本人のコメントやインタビュー、曲をもっと聴いていたかった
- 曲の良いところでファンのインタビューに切り替わってしまう。毎回、曲に酔っているところで差し込まれるので、曲や余韻を十分に楽しめない
- 日本のライブツアーシーンがなかったことが残念。ノエルとリアムの日本への想いや感想、東京ドームでのライブシーンを期待していただけに残念。
※本レビューは物語の核心的な展開には触れていません。
1. 導入:作品の位置づけ
2009年、ノエル・ギャラガーの脱退表明によって解散したオアシス。それから15年を経た2024年、公式SNSを通じて突如発表された再結成と、ワールドツアー「Oasis Live ’25」の開催は、世界中のファンを驚かせた。2025年7月から11月にかけて、イギリス、アイルランド、北米、アジア、オーストラリア、南米をめぐる全41公演が行われ、日本でも東京ドーム2日間で約10万人を動員する社会現象となった。ちなみに筆者は、oasis復活のニュースを、当時六本木で開催されていた『リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展』を閲覧中に発表され、館内がどよめていていたことも記憶にあります。
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は、その伝説のツアーの舞台裏と、20年ぶりに実現したリアムとノエルの合同インタビューを収めたライブ・ドキュメンタリーである。監督はディラン・サザンとウィル・ラブレース、企画はスティーブン・ナイト、配給はディズニーが担う。劇場では2週間限定公開の後、Disney+での配信が予定されている。
2. 演出と映像表現の分析
本作の見どころの一つは、リハーサル初日の張り詰めた空気を余すところなく捉えた映像だ。20年近くにわたる確執を経て同じ部屋に戻ってきた二人の、言葉にならない緊張感がカメラ越しにも伝わってくる。そしてステージ本編では、劇場の音響を活かした圧倒的な臨場感で、まるであの日スタジアムにいたかのような没入感を味わえる。ライブ映像と舞台裏の生々しい素材との対比も巧みで、華やかなステージの裏にある人間味を丁寧にすくい上げている。
一方で、構成面には気になる点もある。楽曲が盛り上がる場面で頻繁にファンインタビューへ切り替わる編集は、感情移入の流れを断ち切ってしまう瞬間が少なくない。ファンの声を挟むこと自体は本作のテーマにも合致した演出意図だと理解できるが、その頻度がやや多く、曲そのものの余韻に浸る時間が削られてしまっているのは惜しい。
3. シナリオとテーマの深掘り
本作の核は、単なる「伝説のバンドの復活劇」ではなく、リアムとノエルという兄弟の「許し」の物語である点にある。15年にわたる絶縁状態を経て、互いを許し合い、かつてのバンドメンバーやファンとともにoasisという場所へ戻ってくるまでの過程が、ステージの熱狂と静かなインタビューの両方を通して描かれる。人生には思い通りにいかないことや、つまずくことがある。それでも人は歩き続けられるし、その背中を音楽が押してくれる――本作が伝えようとしているのは、そうした普遍的なメッセージだ。
ファンのインタビューが持つ言葉の強さも本作を支えている。「他のバンドは倒れた時に立ち上がるのを応援してくれるが、oasisは一緒に倒れて、一緒に立ち上がってくれる」という言葉に象徴されるように、oasisというバンドが多くの人にとって単なる「人気バンド」ではなく、青春や人生そのものと結びついた存在であることが、繰り返し浮かび上がってくる。
ただし、日本のファンとして正直に言えば、東京ドーム公演の様子や、日本への想いを語るリアムとノエルの言葉が本編に含まれていなかった点は大きな心残りだ。約10万人を動員した社会現象級の来日公演でありながら、それが世界規模のツアーのごく一部として扱われてしまったのは、日本のファン目線ではやや物足りなさが残る。また、ファンインタビューの比重が大きい分、リアムとノエル自身の言葉や、じっくりと楽曲に浸る時間がもう少し欲しかったというのも正直な感想である。それでも、ラストシーンで二人が笑い合いながらインタビューに答える姿は、これまで見てきたどの二人よりも幸せそうだった。実際には終始一緒にインタビューを受けていたそうだが、本編ではラストシーンに至るまであえて別々に答えているかのように編集されており、二人が再び同じ画面に並ぶ瞬間の効果を最大限に高める演出になっている。その仕掛けこそが本作らしい粋な見せ方であり、多くの言葉を尽くすよりも雄弁に「許し」を物語っていた。
4. 総評
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は、リアムとノエルからファンへ向けたラブレターのような一本である。単なる復活ライブの記録に留まらず、15年越しの兄弟の和解と、それを見届けたファンたちの想いを重ね合わせることで、音楽ドキュメンタリーの枠を超えた余韻を残す。日本公演の描写が無かったことや、楽曲の余韻を断つ編集のテンポなど気になる点はあるものの、それを補って余りある、ファンにとってかけがえのない一本だ。

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